S・Tちゃんさんの商品レビュー

面白すぎ

さいたまの幼稚園で、園児３人、教諭２人が刺殺される。被疑者は覚せい剤を使用していたため、責任能力が問われるが、あろうことか検事調べの最中、眠気を覚えた検察官が意識を失い、その間に被疑者が射殺されてしまう。この検事と親友のピアニストが急遽、海外から帰国し、悪名高い弁護士・御子柴とともに検察と対峙する。ネタバレになるからこれ以上は慎むが、中山七里氏らしく法廷を舞台に、クラシック音楽を盛り込んだミステリは一気読み。

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小学校

先入観、常識……それらをひっくり返すことで違う世界が見えてくる。短編５作を収録しているが、いずれも小学５年生を主人公にしており、あるいは小学校時代を振り返る形になっているだけに、優しい言葉が使われていて読みやすい。伊坂ワールドを保ちながら、新境地と言っていい。さすが。

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タケちゃん今いち

表題作は、東京の下町の中学で知り合った不良少年４人が、やがてヤクザになり、抗争に巻き込まれていく。作者の思い通りに筋が運びすぎるきらいがある。同録の「３−４Ｘ７月」は、小説としては禁じ手ではないか。恣意的に物語が作れるから。

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安かろう、良かろう？

コロナ禍、ウイルス用のジェルは多少、出回るようになり実際、病院の処方を行う薬局で買い求めたものの、肝心の対応容器が品薄で困っていた。街中の薬局、家庭用品店でも見つからず、そんな時、ネットで知り飛びついた。しっかりしたつくりに見えるので一応、合格点。せめて５００ミリリットル使い切ってから正式な判定を下したいが……。

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西行法師ときましたか

表題作は、妻に先立たれ、息子夫婦と二世帯住宅に暮らす武雄、７０歳が主人公。アダルト雑誌に見入ったり、大学時代のサークル仲間の女性と関係したり、女子高校生の孫も絡み、老人の性について考えさせられる。いや、実際のところは、もっと深く抉った純文学と言っていいのかもしれない。西行法師に材を取ったあたりは天晴。もう１編の「ははばなれ」は母と娘の物語。正直、ＡＶ女優の名前で売るだけの本だろうと興味本位で取り寄せたのだが、２７歳にしてなかなかの筆力。性以外でしっかりした作品が書けたら本物だろう。編集者の腕にもよる。

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認知症・現代的なテーマ

札幌近郊の江別に住む智代のもとに、函館の妹・乃理から電話が入る。「釧路のママがボケちゃったみたい」と。父と二人暮らしのママだが、どうやら認知症らしい。老夫婦、自分たち夫婦、様々な夫婦や親子の有りようが描かれ、「家族」と「老い」を考えさせられる。桜木紫乃氏は好きな作家の一人だが、本作は登場人物がやや多く、混乱しかねないのが難点。名古屋と苫小牧を結ぶフェリーが登場するのは、５０年近く前に乗った者としては懐かしいのだが。

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西国

中学２年生の由井は、同級生の桐原に惹かれ、３年に進級して関係することになる。最初の「西国疾走少女」では、東京の西国分寺を舞台に２人の青春模様が描かれ、やがて周りの人々や、彼ら、彼女らの成長に伴って５編の連作となる。Ｒ−１８文学賞を受けたのは最初の１編なのだろうが、あとの４編も、それ以前から意識していたのだろうか。だとすれば、かなりの書き手だと思う。有島武郎の「小さき者へ」が効果的にインサートされている。「西国」は、書き手の出身地・九州でもあるのか。

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村上春樹氏が、長期間の確執があった父、千秋氏について書いている。猫に関わるエピソードで、父の思い出、とりわけ戦争体験をサンドイッチする形式は、さすがに一流の作家。ノンフィクションに近い作品といってよく、小説よりむしろ読みやすい。祖父が愛知県出身の村上弁識さんとか。「騎士団長殺し」に出て来る免色さんは、ここから名付けた？

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宗教

コロナ禍の今、人生を考える。そんな惹句に興味を抱いて読んでみた。昔、ひょっとしたら――という気もしたのだが、初読だった。生と死。厳しい問題ながら、著者ならではの宗教観が色濃く出ていて考えさせられた。宗教といえば瀬戸内寂聴師も最近、様々な著書を出しているが、当然、それぞれの考え方、受け止め方がある。自殺に関する考察も感じ入った。

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初心に。

美容整形に始まり、肥満、虐待など現代の諸問題が登場。学校を中心に、母子ら様々な人々が、それぞれ語り口調で物語を紡ぐ。このため、人間関係が判りづらく、したがってストーリーもイマイチ理解しがたい。凝りすぎ？ デビュー作の「告白」以来、湊氏のファンだが、最近、やや難解な作品が多い気がする。

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頑張れ党首

２００５年、ＮＨＫの裏金作りを週刊文春に内部告発して以来、局を辞し、ＮＨＫの腐敗を訴え続けている立花孝志氏が、参議院議員に当選し、なおも「ＮＨＫから国民を守る党」の党首としての戦いを振り返って綴る。紅白の実態をはじめ局の体質はもとより、ヤクザ顔負けの集金人まで、中にいた人、さらには選挙を繰り返してきた人ならではの経験談には説得力がある。要はスクランブルを掛ければ済むものを、他の議員のみならず放送法６４条は合憲と判断した摩訶不思議な最高裁。すべては政権べったり。頑張れ、立花さん。ただし、誤字脱字が結構あったため☆を一つ減らした。

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健さんの味付け

素人衆には迷惑を掛けないという、昔かたぎのヤクザ・阿岐本雄蔵。たった６人の組ながら、その世界では大きな力を持つ親分が、北千住の映画館の立て直しに力を貸す。病院、学校、銭湯などと続いてきた任侠シリーズだが、本作が出来は一番。映画館だけに、高倉健のヤクザ映画をまぶしたあたりは笑わせる。今野氏自身、ヤクザが好きな訳はなかろうが、全共闘世代でもあり、池袋の文芸座に通うなどした経験がある筈。あの世代は反権力であり、それが健さんの姿にオーバーラップする。よく言われることだが本書にも若干、通じるところはある。今回は新任の組対係長・仙川が権力の象徴であり、笑い種にも使われている。ただ１か所、３２１ページ２行目だけ、仙川課長になっている。ミス打ち？ 校正ミス？ いただけない。

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テーマは？

人の血を吸って４００年、生きてきた紅鈴。２００年前に血分けした欣治。２人はヤクザの情報収集で生計を立てている圭一と知り合う。やがて分裂した組織の抗争に巻き込まれて行く訳だが……この抗争を追う警察の動きが途中で止まったまま妙な展開になり、どうもよくわからないストーリー。ホラーに重点を置きすぎた結果か？ 売れっ子作家だけに些か雑な作りの気も。

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長距離走者の心理

マラソンを２度走り、日本歴代２位の記録を持つ日向誠だが、突然、スランプに陥る。コーチに抜擢されたのが１位の記録保持者・山城悟。しかし彼は究極の自己中と言っていいランナー。その山城は、日向の弱点はメンタル面の弱さと見抜く。アラン・シリトーの「長距離走者の孤独」には比べるべくもないが、４２．１９５キロのドラマを堂場舜一氏ならではの視点で描き、読ませるあたりはさすが。ただ、主人公が日向と山城のどちらか？ ここが難点。

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超・水戸黄門

ファンド会社の社長が刺殺され、警視庁捜査一課の樋口顕班が捜査を始める。ところが東京地検特捜部は、衆議院議員・秋葉康一の秘書に嫌疑をかけ、強引なガサ入れにまで暴走してしまう。秋葉は、先の選挙で与党の大物を破って当選した市民活動家だ。冤罪？ 樋口の娘が政治に興味を持ち始めるエピソードを盛り込みながら物語は進む。池井戸潤氏の半沢直樹を上回る勧善懲悪の水戸黄門的ストーリーだが、一気に読ませる筆はさすが今野敏氏。相変わらず説教臭さはあるものの、この作家、これほど泣かせる小説の書き手だったかなあ。

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