新帝国歴2年4月2日
イゼルローン要塞にこもるヤン一党を葬り去るために。またしてもラインハルト様は黒色槍騎兵を先陣に指名してくださった。昨年から俺様の大活躍が評価されているに違いない。それが証拠に俺様が密かに流布した小話が高級士官クラブでまことしとやかに話されている。
「ビッテンフェルトは最前線にいるのか」
「少し違うな。奴がいるところを最前線と呼ぶのだ」byビッテンフェルト自作
思い返せば19年前アムリッツァ会戦で、ヤンの奇策に嵌って深追いしすぎラインハルト様に叱責された悔しさをここで晴らす好機なのだ。今回はあの失敗を糧に「慎重黒色槍」モードで臨む事にしよう。
新帝国歴2年4月20日
先日は、銀河一の暴れん坊ビッテンフェルト様ともあろうものが、すっかり弱気になって「慎重黒色槍」モードなんて世迷言を言ってしまった。去年のマル・アデッタ星域会戦でラインハルト様から「ビッテンフェルトが自重に度を過ごすようなことがあれば、黒色槍騎兵の長所を却って削ぐことになろう」というお言葉を賜ったばかりではないか。
イゼルローン要塞が見えるこの前線まで来た今、王虎での作戦会議の中で「和議を結ぶふりをしてヤンをおびき出しひっ捕らえてしまおう」という破廉恥な馬鹿がいた。
「陛下に無能物と呼ばれるのには俺は耐えられる。だが卑劣漢と非難されては、今日まで命がけで陛下に御仕えしてきた意味が無い。」こんな姦夫ががこの黒色槍騎兵にいたとは嘆かわしい限りだ。
新帝国歴2年4月30日
ヤン艦隊から不届きな通信がきた。
「連年失敗続きにもかかわらず、そのつど階級が上昇する奇跡の人ビッテンフェルト提督へ。貴官の短所は勇気と思慮の不均衡にあり、それを是正したく思われるのなら我が軍を攻撃されよ。貴官は失敗を教訓として成長される最後の機会を与えられるであろう」byアッテンポロー
何たる侮辱、何たる傲慢。「ハルバーシュタット副司令官、グレーブナー参謀長!!黒色槍騎兵全艦直ちにイゼルローン回廊に突入せよ!!ヤン艦隊を血祭りに挙げるのだ!!」