一言で言うなら、これは通販、実演販売用に設計された製品と言えます。
もちろん、普通にフライパンとして使えないことはないです。
まだ使い始めたばかりですが、値段に見合う評価をするには、かなり特定の調理に特化した使い方をする必要があるという印象です。例えば、週に3回以上錦糸卵を作る、とか。
このまま使い続けて、比較的高級な、耐久性に優れたフッ素コーティングのフライパンよりも長持ちしたら、少し評価を上げていいかも。
くっつかないメカニズムが”表面の凹凸”、つまり食材との間の”空気層”に由来するので、表面に水や油などの液体が存在すると機能しない、というのが根本的な製品コンセプトの欠陥です。
「ほとんど油をひかなくてもくっつかない、ほらこの通り!」というのは実演販売ではなるほどインパクトがあり、実際、TVでそれを観て購入を決めたのですが、実際の調理現場ではそのような場面はあまり多くありません。これが、”実演販売用に作られた商品”と指摘する理由です。
実際の調理では、食材のくっつきを避けるためだけでなく、味を良くするため(例えば、水と油を混合して”エマルジョン”を作るなど)に油を加えます。ただ、こうすると、このフライパンはただ表面がザラザラして滑りの悪いフライパンになってしまうのです。
プロの調理人なら、このフライパンを好んで使いたい人はあまりいないでしょうね。
また、フライパン表面に空気層を作るということは、通常は潤滑剤や冷却材(伝熱材と言ってもいい)として表面を守る役割をする水や油が存在しない、ということになるので、理論的、工学的にも表面コーティング(樹脂)の耐久性を低下させる要因と言えます。そもそも、表面凹凸が大きいということ自体、耐摩耗性上は不利な要因であることは明らかです。
今のところ、横方向の熱伝導がいいか、など、IH調理で大切な観点で優れているかがよくわかりませんが、本体が結構肉厚なので、これは期待できるかもしれません。
(せっかく熱が面で広がっても、表面凹凸が食材への伝熱を妨げるため、ここでも凹凸が不利に働く可能性はありますが。)
例えば板厚ペラペラの安物フライパンの場合、1回使ってもうムリ!となりますが、この製品に関してそんなことはありません。普通の調理法では”滑りが悪い”印象はあるものの、十分使えるし、せっかく買ったので、もう少し使い込んでみたいと思います。