息が詰まるような小説。エッセイでも見る、もちぎさんの陰と陽の、陰を凝縮したような話。平静を装っている人間の内心を、「ここまで書かなくても・・・」というぐらい追い求めて書いてある。一番醜さを見せつけられたのは、はたから見たら、なんの問題もないような家庭に育った残花、の母から教えられた教育である。女がうまく生きていくための処世術、といえば、格好がつくが、残花の内面の醜さがグサリと刺さったのは、自分と、自分の母にも思い当たる節があったからだ。会話文になると、どの人物の「」からも、ふだんのもちぎさんが透けて見え、作家としての初々しさ、みずみずしさを感じ取った。「子どもの頃の自分を救えるのは、自分しかいない」「誰だって幸せになっていい」のメッセージに、大きく首肯。被害者ぶったり、誰かのせいにするのは、一番簡単だけど、何も生み出さないので。時折もちぎさんの使う漢字が難しくて、辞書を引きながら読みました。勉強になります。先生。