岬洋介シリーズ第5作(ベートーヴェン部の2作目)は,ピアニストを断念した岬が法曹界へ進むべく司法修習を受ける.
三人称・視点人物の天生を通して司法修習生の活動やピアノ演奏シーンがリアルに描写される.ピアノ演奏シーンは6%程度と少ないが,迫力は圧倒的だ.ミステリ部分は小振りながら秀逸で,大団円とそこに至る経過も素晴らしい.前作から続き,そして初期3部作(?)と次回作へと繋がる重要な作品だ.
以下,音楽ミステリ(広義)について
『落下する緑』(田中啓文,2005)から近くは『終わりの歌が聴こえる』(本城雅人,2021)まで色々読んだ.クラシックなら,大震災直後に『シューマンの指』(奥泉光,2010)と本シリーズ『おやすみラフマニノフ』(2010)を楽曲を聴きながら読んだものだ.ミステリではないが『蜜蜂と遠雷』(恩田陸,2016)も良かった.連作し続ける本作者がこの分野の第一人者だと高く評価している.