ここまでメインの登場人物に対して嫌悪感しか感じない小説はめずらしいです。正直、ラストまでその不快感は続きました。怖いもの見たさに近い好奇心で読み進めてオチも大体わかったのですが、それでも私は主人公の十和子に同情も共感もできなかった。
びっくりしたのは、その感想がこの小説の最後の一言で覆った瞬間です。
鳥肌が立ちました。涙が出てきました。
何の救いもなくて、後味も悪くて、決して面白い小説ではありません。
登場人物は誰もがエゴのカタマリみたいだし、誰もが何かを間違えて生きてる。
ただ、陣治という存在が全てで、陣治に対する十和子の不快感がそのまま自分のこの小説に対する不快感なのだと気づいた時、私はこの本を読み終えていました。
傑作なのだと思います。