事件後の弟の苦労や心の葛藤が痛々しいほど詳細に読み取れます。
殺人犯になった兄、殺人犯の弟として生きる主人公。
身内に殺人犯がいる主人公の仲間や妻子、職場の同僚、そして被害者の家族。
主人公を取り巻く多くの人々の声を聞くことができました。
生きていく中で出会う様々な人々に事件のことを打ち明けたり話し合ったりすることで、月並みな言い方ですが、考え方や捉え方は人によっていろいろなのだと実感します。
まさに主人公に対する態度に、顕著にその人の人間性が出ています。
怒りや憎しみを覚えても、結局は同じ環境で育ってきた、たった二人だけの兄弟なのです。
最後には、弟の心とともに読者の心も動かされます。
登場人物の複雑な心境や、何かを大切に想い続ける切なさなど、東野ファンとしてはやっぱり東野圭吾っていいなと思える作品です。