東京農業大国際農業開発学科の2人の教授と京都大学准教授による大学と国の責任を追及する書か。東京農業大学が戦前に派遣した満州開拓団と国策で派遣された開拓団の顛末。東京農業大学の成り立ちから解いて、戦後も満蒙開拓で指導的な役割を果たした人達が大学教員として当時の反省もなく教育に当たったこと等に対して厳しく糾弾している。大学批判とも受け取れる書を岩波書店から出版させる大学の懐の広さにも感心する。
著者の一人小塩は「満州の妖怪、岸信介の孫である安倍晋三首相を筆頭に、かつての満州支配を肯定しようとする政治勢力が、世代を超えて政界に跋扈していることに改めて注意を喚起しておきたい。そして、「国難」などという言葉が公然として使われるようになった今日、満州を背負って生き続け、現地の人々との交流に努めてきた報国農場の生還者たちに学ぶことの重要性がいよいよ増している」と指摘している。肝に銘ずべき言葉である。