この急須のような絞り出し方式の急須は、茶葉の広がる空間が十分に確保されている為、味・水色の出方は折り紙付き。
また、お茶を注ぐ際の流速も十分で、しっかり注ぎ切る事ができます。
しかし、この急須の特筆すべきは、上記の利点を踏まえた上に形成された「簡易性」にあるのではないでしょうか。
まず、蓋の持ち手も大きく作られており、持ち易く、お茶を淹れる際にも押さえ易い。かみ合わせも問題ありません。
さらに、蓋を取った際の形状はほとんど茶碗と大差ないため、茶葉の出し入れが容易ですし、白い釉薬で中がコーティングされている為、茶葉の洗い残しの目視も簡単です。
つまり、この急須は「お茶を楽しむ」行為に対して、茶棚から急須を取り出して、最後にしまう所作に至るまで職人が具体的なイメージを持って追求し、不必要な要素を削ぎ落とした結果生まれたものであると言うことができるのではないでしょうか。
土のあたたかさを感じられる素朴な風合いとシンプルな形状についても、日常の中に素直に入って来てくれる「親しみ」があります。
お茶を日々の一部にする為の職人の工夫が、随所に密やかに感じられるのは、清水焼を擁する京都の奥ゆかしさ故でしょうか。
茶葉漏れに関しても個人的には許容の範囲内です。
深蒸し茶を好まれる方や、茶葉漏れが気になる方については、茶漉しを通せば問題ないと考えます。
もちろん見ての通り、一般的な急須のステレオタイプとはかけ離れている見た目の為、その点で受け付けない方も居るかもしれません。
そこさえクリア出来れば、この急須は「お茶を毎日、美味しく」楽しみたい方にとっては、一考の価値のある作品と言うことが出来るでしょう。
お店の方の対応も、迅速・丁寧で文句のつけようもありません。
また使わせていただきたいと考えております。