殺人事件が起き、捜査や裁判の過程において犯行の動機や殺害に至るまでの経緯が明らかにされ、新聞やテレビ等がそれを報道すると、我々一般の人間は報道されていることが「事件のすべて」だと思ってしまいがちです。しかし殺害の事実そのものに揺るぎはないにせよ、動機等に関して「すべて」が明らかになっているとは限らない、ということをこの小説は教えてくれます。例えば誰かに教唆されて殺害行為を行ったものの、実行犯が自分を唆した相手をかばって全て自分の独断でやったと言っているケース等もあるのでは?などと想像してしまいました。