2022年2月からのロシアによる本格的侵攻を受け、「ウクライナ」に関しての知識が色々と求められ続けていると思う。そして関係する事項への観方も様々であろう。故に過去に登場している本が注目される場合も在ったと思う。そして2022年春頃からだと思うが、様々な本が登場し続けていると見受けられる。本書も、「あとがき」によれば2022年春頃から約1年で準備されたという。
現今の「ウクライナ」に関しては、1991年に現行の国の体制がスタートした「ポストソ連」の色々なことが何やら「雑?」で、国内での様々な争いが時間を負って煩瑣になって、クリミアやドンバスという地域の問題が先鋭化して「侵攻(開戦)」に至ったという程度には観ていた。本書はそういうような経過に関して、詳しく、幅広く、著者が続けている研究の成果や少し前の研究調査のためのウクライナ訪問での御経験を色々と織り込んで綴られている。「あとがき」の部分迄含めて502ページと、こういう「新書」としては許容されそうな範囲で最も厚いような一冊となっていると思う。
ソ連時代の後の“国”が形成されて行く様子や以降の事、「ユーロマイダン革命」を巡る事、クリミアの事、ドンバスで戦いが始まった事、「ドネツク人民共和国」の推移や諸問題というような事、それらを踏まえて目下の戦争の経過、そして「ウクライナは如何する?如何なる?」という纏めになる。章毎に読み進めれば、厚い本であることは全く気にならず、内容に引き込まれてしまう。
結局は、2013年から2014年の「ユーロマイダン革命」という辺りから2022年頃迄の経過に、「ウクライナ」が登場して来た1990年代頃の事柄を加えたというような内容が本書には盛り込まれていると思う。加えて本書の内容は、「国が興る?」、「興った国が存続する?」というより大きな問題に思いを巡らせる入口ともなり得るかもしれない。
事態や事情が伝えられる中で登場する、少し聞き覚えも在る事項について、本書ではその経過や幾つかの観方を詳しく説明している。そういうのが凄く有益だと思う。
「ウクライナ」の情勢経過に関する本としては「非常に佳いモノの一つ」である、なかなかの労作である本書が登場したことを感謝したい。そして広く御薦めしたい。