「死」を間近に控えた石原慎太郎氏が、数年前から自身の来し方を書き綴り、旅立ってから出版された。小説、政治、ヨットはもとより、弟の裕次郎氏、さらには女性遍歴などが赤裸々に書かれている。独特の文体は相変わらずだが、氏の作品の中では読みやすい1冊と言っていい。自死した江藤淳氏への思いは、とりわけ強く、深いと感じさせる。ただ、小説も政治も「嘘」が根底にある世界だけに、信ぴょう性となると疑問符が付く部分も。だいたい物書きは文章を飾るものだから、あるいはデフォルメがありか。にしてもこの表題、氏が安藤昇氏を描いた「あるヤクザの生涯」と同じような……。