山中先生は「将棋音痴で、全然素人」と言いながらも藤井さんの活躍を称賛し、自分の体験談を基に失敗してもいいから新しいことにどんどんチャレンジして欲しいと語りかけています。動物の研究者たちがiPS細胞の開発を「絶対できない」と自分に勝手にかけていたブレーキが、植物の研究者との意見交換で外れたこと、生物学とはまったく関係のない工学部出身の学生の発想がiPS細胞を作るきっかけになったこと等、様々な興味深い話を聞いた藤井さんは、将棋の世界に置き換えて考え吸収しようとしています。
山中先生が藤井さんにもっとも伝えたかったのは、「やらずに後悔するよりは、やって失敗する方がいいですよ。何も挑戦しないのがいちばんの失敗だと思います」というメッセージかもしれません。「おそらくAIは過去の様々なデータから確率論で決めると思いますが、人間はそうでもない。今までの信念や勘から意思決定があって、それが成功につながったという例は山ほどあります。」と人間の可能性を訴えています。将棋の世界でも研究者の世界でもAIと向き合わざるを得ない時代を迎えて、人間が何をすべきかという命題を考えています。
この本は、何かに迷っている若い人たちに読んで欲しいと思います。お2人の今後のご活躍を祈念するとともに、応援させていただきたいと思います。