主人公の女性ジャーナリストが、可愛い。田んぼに愛があり、右往左往、悪戦苦闘しながら、物語を引っ張っていくのが、微笑ましい物語。
そして日本酒も、面白い。その歴史と醸造工程の蘊蓄が、緻密に詰め込まれている。
古き良き時代の「虚無への供物」などの衒学趣味に通じるものがある。
日本酒の奥深さと、論理的な推理の進展が、交互に渾然一体となっている。
また、脱法ライスという虚構のドラッグと、リアルな日本酒醸造工程が、見事に融合されている。
ミステリーの進展と一緒に、酒造りの工程が進み、読み終えると酒造りが理解できてしまう仕掛けも、お見事。
ラストのドンデン返し、意外な犯人像に余韻が深く残る。