クライマックスの同時に起こっている様々な出来事を描くハイスピ―ド撮影は、ブライアン・デ・パルマ監督の真骨頂である。この作品は90数分とコンパクトで、ハリウッド大作といえる「アンタッチャブル」、「スカーフェイス」、「カリートの道」、「ミッションインポッシブル」等の諸作よりは、初期の「悪魔のシスター」、「愛のメモリー」、彼を一躍有名にした「キャリー」、「殺しのドレス」のように自分の趣味を全面展開した作品になっている。
画面に映っていることが真実なのか?フェイクなのか?妄想と現実、その境界も曖昧で一度見ただけではよく分からない。そこが一番面白いところだが。
ディレクターズカット版は、ファンであるというオランダ人監督、ピート・ゲルダーブロムが再編集したものだが、デ・パルマ監督が「正式に承認」し、「パッケージ収録を熱望した」とのこと。普通監督は自らの作品を他の人に弄られるのを嫌がるものだが、良い人なのか、事前に話があったのか、実に寛容なことである。