落合は選手としては、「華々しい主流」を歩むのでもないキャリアを重ねながら、プロ野球界で打者としての確固たる実績を残し、キャリアの後半は「バットを持って、優勝請負人のように幾つかのチームを渡り歩いた」というようなイメージも在る。自身の確かな技術を駆使した実績を有する他方、プロとして他選手のプレーや試合の状況等を見詰める確かな眼も備えていたのかもしれない。
そういう落合は8シーズンの間、ドラゴンズの監督を務め続けて、その8シーズンの間には全て3位以上、リーグ優勝は4回、日本シリーズ出場は5回、“クライマックスシリーズ”で勝ち上がって日本シリーズに出場した2007年には「日本一」を掴み取った。これは凄い実績であろう。これだけの実績を上げた監督は、御本人の個人的な事情でも無ければ、解任ということにはなり悪い筈だ。が、それでも2011年の日本シリーズで敗れてしまった後、時季以降の契約をしないことになったのだった。そうなると“嫌われた監督”ということになるのだろうか?
本書は、名古屋に拠点を有するスポーツ新聞で、ドラゴンズの話題を綴る記者として活動した経過が在るライターが、落合監督自身や、落合監督がドラゴンズの指揮を執った時期に活動した選手や球団関係者の同時代の、または後年に振り返っての証言も挟みながら、更に筆者自身の当時の記者としての活動の事も加えながら「“嫌われた監督”たる落合が目指したモノは?落合が生きた価値観は如何いうモノだった?」ということを綴っている内容だ。雑誌に連載した内容を、単行本として世に送り出す際に、少し手が入っているようではあるのだが、一寸だけ夢中にしてくれる何かが秘められている一冊だった…
本書は、落合がドラゴンズの監督を務めていた期間の出来事を、ドラゴンズの取材をしていた立場で、色々な人達の挿話を多く織り込みながら綴っていて、「一つの時代を綴る一つの物語」として巧く纏まっていて、そういう辺りに引き込まれて素早く読了に至った。本書で描かれる「落合監督」、本書に出て来る様々な関係者が語る落合が率いたチームの人達の様子は、何か魅力的であるような気もする。