主役は武蔵ではない。武蔵と真剣勝負した剣豪達だ。武蔵の心情の描写はほとんどない。会話もない。あるのは剣豪達の思いと彼らとの生死を掛けた勝負だけだ。勝負に二言はないが、勝者の敗者への愛情を感じる。途中よくわからない描写があり?となるが、それは最後にわかる仕掛けだ。なぜ最後の方の章に養父の無二の章があるのか?勝負した強豪達が主役の話ではなかったのか?それも読めばわかる。憲法は武蔵に会わなかったが、憲法黒を見せることで目的は成就できた。相語らずとも極めた者にはわかるものだ。武蔵の可能性を秘めた人生を映し出した素晴らしい書だ。