表題作は、妻に先立たれ、息子夫婦と二世帯住宅に暮らす武雄、70歳が主人公。アダルト雑誌に見入ったり、大学時代のサークル仲間の女性と関係したり、女子高校生の孫も絡み、老人の性について考えさせられる。いや、実際のところは、もっと深く抉った純文学と言っていいのかもしれない。西行法師に材を取ったあたりは天晴。もう1編の「ははばなれ」は母と娘の物語。正直、AV女優の名前で売るだけの本だろうと興味本位で取り寄せたのだが、27歳にしてなかなかの筆力。性以外でしっかりした作品が書けたら本物だろう。編集者の腕にもよる。