56ページ「源氏ゆかりの薙刀」
"源頼朝の妻の静御前”と書かれている。
頼朝の妻は北条政子であり、静御前は義経の愛妾である。
こんな基本的な部分で間違ったことが書かれていると、込みいった部分に関しては、何も信じられない。
88~89ページの「太刀・無銘(号 薄緑丸)」とある刀剣の説明文には、
"もとは「膝丸」とよばれる源氏の重宝。源義経が「薄緑丸」と名付け、箱根神社に奉納したという。反りが浅い初期の太刀である”
として、刃長76.5センチの刀剣の写真があった。
が、もとは「膝丸」とよばれたのは「薄緑」である。少なくともこの雑誌の12ページにそう書かれている。87.8センチで大覚寺にあり、箱根神社にある「薄緑丸」とは別物である。
この雑誌の折り込み付録にも、大覚寺にある「薄緑(膝丸)87.8センチ」と、箱根神社にある「薄緑丸 76.5センチ」が表裏をなしているのだが。
同じ雑誌内に書かれている内容がちぐはぐである。
統一した監修や校正がなされていないのでは?
初見、ちら見しただけでこの有様。
わかる人が見れば、もっとおかしなことだらけだろう。
写真も出典や撮影者が書いてあるものと、書かれていないものとがあり、
大多数は、所蔵元は記してあっても、写真の出典が記されていない。
御物など、とても出版社が雑誌作成で写真にとれるものではないはず。出典元は……?
ものによってはこれが本当にその刀なのか、と疑わしきものもあった。
刀剣画報と名乗っているが、その場拵えの付け焼刃的な部分が目につく。
刀剣に詳しい人が監修を担当している内容ではない。
唯一、面白かったのは「日本刀入門」という部分で、正秀の刃文の特徴がよく見て取れた。
紙質がしっかりしていて高級感があるので、内容もしっかりしているかと期待していた。