本物の医師が書いた小説だけに、院内はじめ患者との関わり、治療の様子などはリアリティーがある。著者は同じ信州の病院を舞台にした青年医師のシリーズをヒットさせているが、今回はやや趣を変え、高齢社会と看取りについても私見を盛り込み、従来の医者ものにはない目新しさを感じさせる。花が大きな役割を果たしているのもいいし、登場人物のキャラも立っている。ただ、看護師・美琴との恋愛が、あまりにも時代遅れで、そりゃあ無いでしょ、といったところ。主人公の医師が桂正太郎。大昔の「愛染かつら」だって、もっとススンでいた。