19歳のうーちゃんは、母が離婚を切っ掛けにメンタル面を病んでしまったことに苦しんでいる。結句、補陀落渡海で知られる熊野への旅に出る。純文学と言うのはよく解らぬが、村田沙耶香氏の世界に近い気はする。芥川賞受賞作よりも出来が良いのでは? 少なくとも読みやすい文体ではあった。高橋源一郎氏は、中上健次の「一九歳の地図」を思い浮かべたと帯に書いているが、健次の娘、中上紀さんは多感な時期を熊野や那智で過ごし、この地の祭りや補陀落渡海に詳しいだけでなく、毎年、盆のころに「熊野大学」を開いている。紀さんは、どんな感想を抱くだろう。