この数か月、哲学系の書籍にどっぷり浸かっており、気分転換に科学系著者の本を読みたく購入しました。
あっさりと一日もかからず読める本でしたが、著者の肩書やレビューに過剰な先入観をもっていたからか、
失礼ながら言葉に重みが感じられず、同じ内容の繰り返しで最後まで堂々巡りで終わってしまった印象です。
後半で何度も出てくる「叡智」ということの意味を、どのように田坂さんが捉えておられるのか、そうした一番本質に迫ってほしい部分がスルスルと抜け落ち、”紙幅の関係により別の機会に”といった表現も何度も出てきて、結局読者が最も求めているものが表面を滑るように流れていきます。早世されたご友人や、国難にある国々との対比によって現在の自分たちの幸せをかみしめる、また、「運気を引き寄せる」と言いつつも「すべては与えられるもの」といった相容れない見方をされることも、真剣に悩み、現状を打開されたいと願って本書を手にされた方々には受け入れ難い思想ではないかと感じます。本著が出されたのはコロナ以前ですが、”「人生における問題、すべて、自分に原因がある」と引き受ける” これが、究極にポジティブな人生観を体得していく方法だと、万人に向け言い切ってよいのでしょうか。私は正直、心にさざ波がたち、穏やかではいられない心境になってしまいました。