いきなりだが、私はマイルズ・モラレスが好きではない。
スパイダーマンと言えばピーター・パーカーだと思っているし、PS4のMarvel's Spider-Manではマイルズ操作パートで何度コントローラーを投げたくなったか分からない。表の通りなら安全なものを、近道したいから警備が厳重な裏道を通り抜けようだなんて発想が受け入れられない。
この映画でもマイルズは映画冒頭からアウトローなおっさんに喜んで付いていって、一緒に壁にスプレーで落書きするなど「こいつ本当にヒーローになるのかよ」と思うような人物なのだが、別の世界からやってきたピーター・B・パーカーが嫌々ながら師匠になってからヒーローらしさを獲得していく。
ピーター・B・パーカーは中年太りのおっさんで、離婚して独り身、投資に失敗して散財、長年のヒーロー活動で腰を痛めているなど散々な人物だ。モチベーションも低く、マイルズの師匠になるという話も嫌がる。そんな彼も、戦いの中で少しずつ昔の気持ちを思い出していく。
この映画は、マイルズ・モラレスがヒーローらしくなるまでの物語であり、ピーター・B・パーカーがヒーローらしさを取り戻すまでの物語である。途中までグダグダだった二人を見ているからこそ最後のシーンに味がある。私と同じようにマイルズが好きではないという人も、是非一度見てみて欲しい作品だ。