著者は、ゆとり教育の見直しのきっかけになった「分数ができない大学生」の分担著者です。
今回の「%が分からない大学生~日本の数学教育の致命的欠陥」を一読して、まず両者の題の違いに気付きました。「できない」と「分からない」の違いです。やり方を真似すればできます。しかし、根本を理解しなければ分かりません。
その違いを留意して読むことが大切だと分かりました。「%が分からない大学生」は入口です。小学校から、算数・数学を理解できない生徒は直ぐにやり方に走る教育を受けさせられます。理解しないうちから「は・じ・き」「く・も・わ」式の学習にさせられ、結果として%が分からない大学生になることを警告しています。とくに%は、もとにする量と比べられる量の表現がいろいろで、しっかり理解していないと間違ってしまいます。これは、本書に書いてあるように、算数から数学まで様々な「理解無視」の「暗記優先」の教育に現れることを具体的事例をもとに述べてあります。
このような教育になった背景には、大学入試で答えを当てる「マークシート式」の試験が中心なことがあり、プロセスを述べた記述式を含む大学入試共通テストに移行する訳もよく分かります。
この種の題の本は、単に大学生のダメさ加減だけをセンセーショナルに書いてある本ばかりですが、本書は真逆で、%が分からない大学生は間違った教育の犠牲者の面が大きいという考えのもと、そのような大学生の立場に全面的に立っていることが素晴らしいと思い、支持したくなる本です。