1960年代から、平成が終わろうとしている現代に至るまでの”音楽”と”時代”の中で「チェッカーズ」というバンドの位置づけが定義されている、稀少価値の高い本。
また、デビューから解散までの約10年の間で、バンドとしての「チェッカーズ」がいかに成長したか、音楽理論や深い知識を駆使して説明されている著者の、人気絶頂期の「アイドル」のイメージだけで「チェッカーズ」を終わらせるには、本当にもったいないという気持ちが伝わってくる。
仲間同士で始めたバンドの多くが悩む、”自分達のやりたい音楽”と”売れる音楽”という対立しうる価値観を、初期の芹澤廣明氏時代からオリジナル時代まで、メンバー・スタッフ間での試行錯誤で、悩みながらも見事に両立していく描写もとても興味深い。
圧巻は鶴久政治氏と大土井裕二氏へのインタビュー。二人が思わず口にしてしまったような、興味をそそられる内容を引き出した著者の手腕には脱帽。一ファンとして感謝したい。
同郷の7人が純粋に音楽を楽しみ、追及し、技術的にもかなりのレベルに到達していった姿と、時代を読み取る野性的、かつ、知性的な嗅覚で成功した「チェッカーズ」という稀有なバンドの評価が見直されるきっかけになる本だと思う。
細かな史実の部分では、コアなチェッカーズファンには物足りなさはあると思うが、この本を読むことで、「チェッカーズ」を80年代に存在した程度に思っている層が、「チェッカーズの音楽」を真剣に聴き直してみたくなるのは間違いない。