本作は150分以上の大作であるにも関わらず、物語は実にテンポよく進み、全然飽きさせないブラックな政治喜劇である。山本薩夫監督は戦前から活躍する硬派の左翼系監督だが、エンターテインメント性を強く打ち出した演出も持ち合わせ、面白い映画作りの名手とも言える。
「真空地帯」、「武器なき斗い」、「太陽のない街」、「荷車の歌」、「人間の壁」「松川事件」等社会や時代を真正面から告発する映画は真骨頂だが、後年は「忍びの者」、「にっぽん泥棒物語」、「白い巨塔」、「戦争と人間」、「華麗なる一族」、「不毛地帯」そして本作と大映、東映、東宝、日活といった大手映画会社を股に掛けて大作映画に練達の演出手腕を発揮し、娯楽的にも面白い映画を作っていた。
今回のブルーレイは、「等倍超解像処理などを施した高画質」と宣伝惹句に書いてあるが、目を見張るような高画質ではない。元々45年近く前のフィルム映像であるし、今日のような美麗映像ではなかったのだろう。