不鮮明な白黒の図版だけをもとに、ファッションの話をされても想像がつかず、 著者が熱弁を振るっても虚しいばかり。
「ヴィクトリア朝の女性たち」というタイトルですが、 一般的なヴィクトリア朝のイメージで読むと肩すかしをくらいます。
ヴィクトリア朝は1901年に終わっているにも関わらず、本書は19世紀も末期から始まるスポーツウェアの進化の話なので…
著者がこのテーマで学会に発表した論文のタイトルは、 多くが19世紀後半、19世紀末、20世紀という言葉を使っているにもかかわらず、 ぬけぬけと『ヴィクトリア調』というタイトルをつけた原書房の売らんかなの姿勢に胸が悪くなりました。
人気の「ヴィクトリア朝」というタイトルさえ付ければ何でも売れるという魂胆がミエミエで、一般読者への配慮がみじんも感じられません。
どうしてもヴィクトリア朝と名乗りたいのであれば、まずそれ以前のヴィクトリアンファッションとはどういうものかをカラー図版を使って丁寧に説明し、それがどのようにスポーツに向けて発展したかを述べるのでなければ、専門家以外にはわけが解らないでしょう。
ハードカバーの表紙ばかり厚く、薄い内容の本にこの価格、 無駄な買い物でした。