以前「当事者研究」の言葉を初めて聞いた時に、何か特定のメンバーで特定の病・事柄について話合っているのだろうか?とイメージがつきにくかったがこの本を手に取り、雲が晴れていくように理解出来た。
思っていたよりももっと自由に垣根をとっぱらったものと感じた。
タイトル「生きづらいでしたか?」は多くの人が「生きづらいですか?」「生きづらかったですか?」と書きそうなところを、筆者のこれまでの体験・目線から自分への問いかけも込め「でしたか?」というインパクトある表現になったのだろう。
筆者の作品はこれに限らず読者と筆者が同じ目線で内容を読み進めていけるよう、気取らずに知ったかぶりせずに時には恥ずかしさまでもさらけ出して書いていくところが持ち味だと思う。
気がつけば一緒に「そーね」「べてる」に顔を出したような気持ちにすらなる親近感。
53ページの向谷地生良さんの「「べてる」には人の視線や評価を気にする文化がないんですよ」にどれだけ自分が人の評価ばかり(特定の場所に限る)気にしながら傷ついて耐えてきたか気が付き、
63ページのべてるの機織りの女性が自分自身と重なって見えて、
70ページのいじめ(られた)経験が守り神のように居座る話の流れからの、たくさんの経験をすることで自分の必要なものを選択できるようになる、
上記3か所のページで泣いた。
逆に今の自分にとってはべてるで当事者研究をしているさなか「あの人何言ってるかわかんない」やら「ジャマで見えない」やら「つまんない」とか言っちゃう人もいる描写に「えーーーーーー(それ許されるの?!)」の笑い。
そのあたりの空気もしっかり描かれていてコミックエッセイならでは。空港からさらに4時間かかるべてるの家へ本気で取材に行かれた様子が伝わってくる。
いくつかの当事者研究会も後半に書かれているが、ひとりでも出来る「ぼっち研究」。筆者も一年SNS掲載という形で「シアワセと感じたこと研究」を続けていたようだ。
この本1200円税別だが内容が濃く、今後困った事が出来た時に何度も手にしそうな事を思うともう少し高くても良いと思ってしまうほど満足だった。