江戸時代を通じて現在の徳島県に相当する阿波国と淡路島とを知行していた大名家の蜂須賀家の始祖は、豊臣秀吉に仕えた蜂須賀小六の嫡男であった蜂須賀家政である。その蜂須賀家政が本作の主人公だ。そして蜂須賀家政は「阿波の狸」等とも呼ばれたという、なかなかの策士であったともいう。
本作は、若武者が偉大な父とは一味違う国主へと成長する物語であり、城下町を起こして流通を盛んにする他方で商品作物の藍に着目した産業振興を図るという経営関係の物語であり、大きな合戦での生き残りを図る戦略の物語でもあり、多様な要素が織り込まれている。
作中、酷く記憶に残るフレーズが在る。「尽くされて当然の主もいなければ、尽くして当然の臣下もいない」というものだ。非常に示唆に富んでいると思った…
愉しい一冊!御薦め!