この翻訳は31年ぶりだという。確かに満を持して出版されたという実感が感じられる。本の大きさは、口語訳よりも小さめであり、活字も小さい。段落ごとに小見出しが付いていて読みやすい。
用語は、現代のセンスを考慮している。正式名称「ハンセン病」をかつては端的に表現していたが、口語訳では「重い皮膚病」となり、今回の訳では「規定の病」となっている。読んでいて、文の流れが不自然な感じがする。現代のセンスを大切にするのもよいが、当時のセンスを伝えるのも大事ではないかと思うが、いかがであろうか。
口語訳のマタイ福音書で、当方の3博士が面会したイエスキリストを「幼な子」と訳しており、ルカ福音書で、羊飼いが面会した誕生時のイエスキリストも「幼な子」と訳している。英語では、前者は「young child」であり、後者は「baby」である。このように時間的な差異があり、3博士はイエスキリスト誕生時には面会していない。彼らが会ったのは2歳近くに成長したイエスキリストである。今回の訳ではそれぞれ「幼な子」「乳飲み子」と訳し分けられていて、正確だ。
まだざっと見ただけだが、総じてよく考えられた力作だと感じる。☆5個。