プロローグの冒頭から、タイトルや裏表紙のあらすじからは予想できる筈の無い主人公の設定に意識を持っていかれました。
文章全体は基本的に主人公の一人称で構成されていて、肩の力を抜いて先へ先へと読み進める事が出来ると思います。
柔らかな文体に、次々にページをめくっていく中で明らかになる「15分1万円のバイト」の真実。
主人公は、“バイト”を通して出会った人や水品さんの過去を知ることになる。
ただ爽やかなだけのお話では決してありません。
描かれている日常の中にごくありふれた、悪意とも違う人の残酷さに胸が苦しくなるかもしれません。
でも、この物語を読み終えた私は、誰かの――少なくとも登場人物四人の――幸福を祈れる位には、優しい気持ちを貰えたと、そう感じています。
お勧めです。