シチュエーションは違えども、この主人公のように感じた経験がある人は多いと思う。本来は感じ方や考え方なんて皆違うのに、普通という名の固定観念を押し付けられる辛さや、普通に生きたいと思っているのに上手にその枠にはまる事が出来ない絶望感。とても共感したと同時に、ちょっと苦しくなりました。
普段小説を読んでいると、台詞と台詞の間の文章に違和感を抱く事がよくあります。「と言った」「と思った」というような表現の重複を避けるために、色んな言い回しをしたり情景の描写を挟んだり、多分小説家なら誰もが苦しむ部分なんだろうなと思うのですが、作為的な感じに引っ掛かる事が多いです。ですが、この作品を読んでいるとそのような箇所が全く無くて、つるりと内面に入り込んでくるような文章で、すごく書く力がある人なんだなと感じました。村田さんの作品を読んだのはこれが初めてだったので、他の作品も読んでみたいなと思います。