この作者のストーリーテリングや読ませる力はすごいです。
本作でスパイアクションに挑戦したとのことで手に取ってみました。
ジャンルは違いますが、Pefumeは「かわいい+テクノ」で成功していますし、ベビメタも「かわいい+ヘビーメタル」の異種MIXで世界を突っ走っています。「本格ハードボイルドスパイアクション=男のロマンス」の枠から外れた新境地であることを期待しました。
基本的に、少なくとも上巻だけは非常に緻密な下調査で裏打ちされた非常に本格派に近い作品と思います。とはいえ、それら綿密な組み立ては、キャラクターの個人周辺に特化されていて、全体の流れで見ると「それ、シロウト?」という穴が目立ちます。二人を罠にはめるんだったら、罠の出所がわかるような共通の事案を使ってはだめですよ。点と点があっという間につながってしまいます。
そもそも「きわめて個人的な事件だと思っていたが、実は全人類の生命がかかっていたのだっ」ならわかりますが、本作「未曽有の人命がかかった大事件だと思っていたら、いたってパーソナルなものだった」という展開。裏をかいたつもりかもしれませんが、スケール感が乏しいです。
楽しんで読みました、それは認めます。
でも、読み返そうとは思いません。