徳川傍系の高須に生まれた四兄弟。いち早く官軍についた慶勝と、佐幕派の弟三人にの生きざまを描く。慶勝の趣味が写真鏡、つまりカメラだったことを絡ませながら、江戸から明治に移る時代を綴っている訳だが、人物名のややこしさに加え、幕末の事情に詳しくないと、やや理解しにくい。青松葉事件を中心にした小説は城山三郎氏の「冬の派閥」があり、とても敵うものではない。日本史の教科書のような読みづらさもある。先ごろ亡くなった葉室麟氏なら、どう料理したかと思うのだが、本作は新田次郎賞に選ばれたと聞くから、小説は解らない。