大坂西町奉行(第一巻)から四十五歳の若さで江戸北町奉行に栄転した能吏の曲淵甲斐守、その家臣であり内与力である若干二十四歳の本書主人公である城見亨。奉行所改革を志し、出世欲旺盛な甲斐守と厚き忠義心の亨が、既得権益を守ろうとする配下の町方役人と暗闘するシリーズ第5弾。
与力・城見亨を慕う大坂娘の咲江が闇の勢力に狙われている。咲江の大叔父・播磨屋伊右衛門から助けを求められた曲淵甲斐守は、自身を追い落とそうとする町方役人の卑劣な思惑を察知する。胡乱な輩と手を結ぶ与力同心など言語道断。全面対決を決意した甲斐守から咲江の護衛を命じられた亨は、刺客集団との血で血を洗う殺し合いを覚悟する!喰うか喰われるか、その対決の行方は。。。
権謀術数をめぐらせ奉行所内の敵を一人ずつ剥がしていく曲淵甲斐守の苛烈さ、その甲斐守の薫陶を受け内与力として育っていく亨の姿、自身が囮になり想い人の亨を助けようとする咲江の健気さが面白い。今回から(今回だけ?)頼もしい助っ人が加わり、これから先の展開が楽しみです。
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■本書の基本情報
・筆者:上田 秀人(ウエダヒデト)
・略歴:1959年大阪府生まれ、大阪歯科大学卒。’97年、桃園書房主催第20回小説CLUB新人賞佳作。歴史知識に裏打ちされた骨太の作風で注目を集める。2010年『孤闘 立花宗茂』(中央公論新社)で第16回中山義秀文学賞受賞。’14年版「この時代小説がすごい!」文庫書き下ろし部門作家ランキング第1位となる
・発行:幻冬舎
・発売:2017年9月
・ページ数:338p
■これまでに購読した上田秀人の著書
・「孤闘 立花宗茂」
・「将軍家見聞役 元八郎」(全6巻)
・「勘定吟味役異聞」(全8巻)
・「妾屋昼兵衛 女帳面」(全8巻)
・「お髷番承り候」(全10巻)
・「奥右筆秘帳」(全12巻)、「奥右筆外伝」
・「御広敷用人 大奥記録」(全12巻)
・「百万石の留守居役」…第9巻まで
・「町奉行内与力奮闘記」…第4巻まで(本書)
・「峠道 鷹の見た風景」(上杉鷹山)