飛鳥時代には柿本人麻呂、平安時代には西行法師、江戸時代には松尾芭蕉と呼ばれた一つの霊魂の生まれ変わりを描き、スピリチュアリズムをテーマにして書かれた小説である。
3人の人生の軌跡はいずれも同様であり、その現世と霊界の魂の変遷の様子を活写し、千年にわたる人生を描いているが、実にリアリティーに満ちている。
それぞれがその時代にあった詩歌の道を探求し、カルマのもとで苦闘していく様には、まるで本物の人間が作品のうえでぐいぐいと動きまわっているようである。
そして、膨大の資料のもとに描かれた霊魂の存在(人間は霊的存在)、死後の世界の実相に迫る説明には、確かに納得させられるものがある。