日本と近隣の国との関係は経済的には密接で、政治・文化の面で危険と緊張をはらんでいるのは事実でしょう。幅の広い儒教思想を著者がどの程度理解されているのか分かりませんが、儒教を人間の生き方の基準と理解するなら、日本人は自制して身を治め、家庭や地域・隣人に気を配る、将にある意味では儒教的生き方を生活の中で自然に身につける努力をしています。これを欧米人の好む言葉「武士道」で括られると、この我々の生き方が儒教とは無関係なものに捉えられてしまう危険性があります。無論近隣の国で、仁・義・礼が空洞化しつつあるのは心して対応すべきことです。
もう一つ、日本を殊の外深く理解しておられる著者が、沖縄問題を「工作員」の危険を前面に出して説明しておられますが、日本の政治が沖縄を開発支援と法律的規制の高い目線から眺めて、その文化や地理的特性を尊敬と感謝を以って受け止める姿勢を欠いている点も論考すべきでしょう。それが「工作員」の活動余地を無くす最善の策だと思いますが。
現政権に反対をする人を含めて沖縄に住む人々は切っても切れない我々の同胞です。もしそこに対立があるなら、それを埋めるのが我々国民に課された義務だと思うのです。