赤目小籐次は元豊後森藩江戸下屋敷の厩番。五尺一寸(約153cm)の矮躯に大顔、大目玉、大耳、団子鼻、禿げ上がった額が特徴の初老の侍。無類の大酒飲み。父・伊蔵に鍛えられた一子相伝の秘剣・来島水軍流の達人。小籐次の名を江都に知らしめたのは、世にいう『御鑓拝借』事件だった。主君が江戸城中で同じ詰之間の四藩主に恥辱を受けたと聞き、仇を討つべく脱藩。四藩の大名行列を次々に襲い、そのシンボルともいえる御鑓先を奪うことで四藩主の謝罪を取りつけた。事件後、奉公を辞し、新兵衛長屋に居を定めた小籐次は、父から仕込まれた研ぎ仕事と厩番時代に内職で励んだ竹細工で生計を立てる。仕事ぶりは誠心誠意、全身全霊で、仕上がりは名人芸。だが、情にほだされれば御代を受け取らない典型的な器用貧乏。
美人で歌人の妻:おりょう、養子:駿太郎(小籐次を襲った刺客から託されたの子、当時は赤ん坊)、新兵衛長屋の面々ら、小籐次を取り巻く人たちと織りなす人間ドラマの新シリーズの第7弾。
今回は、落馬して打撲傷を負った小籐次は、久慈屋夫妻、おりょうとともに熱海に湯治に行ったことで恢復。そんなある日、火事で二人が焼死し、そのさなか料理茶屋の娘が行方知れずになった。焼死した二人の男は御庭番だという。老中の意を受けた小籐次がその謎を追うが。。。
一段高みにのぼった感のある小籐次の老練さと、11歳になった駿太郎の成長ぶりが見物。なにやら、別シリーズの坂崎磐音と嫡子空也の物語に似てますね。
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■本書の基本情報
・筆者:佐伯 泰英(サエキ ヤスヒデ)
・略歴:1942年、北九州市生まれ。日本大学芸術学部映画学科卒。デビュー作『闘牛』以後、スペインをテーマにした作品を発表。'99年、初の時代小説『密命』を皮切りに次々と作品を刊行、時代小説の旗手として高い評価を得る。
・出版:双葉社
・発売:2017年2月
・ページ数:331p
■これまでに購読した佐伯泰英の著書
・「異風者」
・「密命」(全26巻)
・「夏目影二郎始末旅」…第14巻まで
・「古着屋総兵衛影始末」(全11巻)
・「吉原裏同心」…第16巻まで
・「居眠り磐音江戸草双紙」(全51巻)、「居眠り磐音江戸草双紙 読本」
・「酔いどれ小藤次留書」(全20巻)
・「新・酔いどれ小藤次」…第6巻まで(本書)
・「空也十番勝負」…第2巻まで