加藤泰監督版「宮本武蔵」は148分で、関ヶ原から巌流島の決闘までを描いた吉川英治の長編小説を映画化するのだから大変忙しい。映画化された中では一番有名な内田吐夢監督=中村錦之助主演版では、全5部作、10時間弱で描かれているのだからその慌ただしさは比べものにならない。
関ヶ原から故郷に戻って沢庵和尚に捕縛され脱走を図るのだが、その後の姫路城幽閉、池田輝政との件はバッサリとカット、突然吉岡家へ現れる。従って宮本武蔵として既に出来上がっており、一躍剣の達人になっている。そして、内田監督版では第4部のクライマックスだった一乗寺下り松の決闘まで、この作品では僅か1時間12分である。しかし、その決闘の描写は凄い。名目人の子供(壬生源次郎)の首を落し、その父、吉岡家長老・壬生源左衛門は頭を割られて血がドバドバという、ホラー映画もかくやというスプラッター描写である。特に子供のくだりは、この時代故に許されたことだろう。
この作品は今までDVD化されずいきなりのブルーレイ化は、封切以来40年振りに見ることが出来て嬉しいのだが、何故この作品かという思いもある。同じ松竹で、加藤泰監督作品では既にDVDでは出ている「人生劇場」、「花と龍」、「みな殺しの霊歌」があり、こちらもブルーレイ化して欲しいところである(「男の顔は履歴書」は出る予定だが)。
なおブルーレイの画質は、この松竹のあの頃映画シリーズとしては、「ニューHDマスター使用」を謳っただけあって良質で綺麗である。