取材に11年かけたとの宣伝文句は伊達ではない。何気ない演奏の描写が、半端な情報量ではない。また、コンクールの審査員の苦悩、その審査に対する苦情もさらっと流してはいるものの、充分な取材が伺える。ピアノ音楽が好きな私にはとても面白かった。一色まことのマンガ「ピアノの森」の一ノ瀬海が本作でも登場しているようだ。
ネット上に、「ピアノの森」のパクリだとする非難のHPが出ている。
やはり、私と同様の感想を持つ人もいたようだ。しかし、パクリだと非難してしまうのは軽率である。
曲の解釈の深さには敬服に値する。演奏者それぞれの解釈の違いを文で緻密に表現している。
コレをパクリだとしたら、ピアノコンクールを題材にした作品は書けなくなってしまう。
マンガと小説、それぞれが傑作である。