全12話のTVシリーズ程のボリュームがあるストーリーを、監督PTAが力業で2時間半に詰め込んだような作品。同監督の『マグノリア』と同じ位の上映時間で登場人物の多さなども共通しているが、あれは1日という限られた時間の中でのお話であって、割とまったりした群像劇だった(オチが凄いスピード感だけど)。一方の今作は、主人公ドックの視線でしか話が進まないにも関わらず、とにかく複雑というよりも煩雑。観ている者を置き去りにしてあちこちぐいぐい進む。60年代~70年代の時代背景や、ロスアンジェルス警察組織・犯罪組織の闇、人種差別の状況、ハッパ依存、あらゆることをわかっている人でなければ、あぁなるほどね、という感想には至らないだろう。私は、理解できているとはまったく思えない。それでも、この作品を駄作とは言えない。PTAらしい映像の圧力(絶対的な美しさではない)、ホアキン・フェニックスの目の演技力、どこか心に引っかかる音楽。当面の間、心の中に居座るだろう、問題作。