前著の資本論<入門>から約6年、待望していた続編です。本書の元になった講座をYoutubeで必死に視聴していただけに、その意味でも待望していました。
2巻はマルクス主義者からも忘却された巻で、一般的なマルクス主義者が2巻を取り上げる部分は、社会主義社会のスケッチをした一節か再生産表式くらいです。2巻を正面から解説した本という意味でも特筆されます。
2巻が忘れ去られてきたのは、淡々と技術的な議論が続いたり、資本主義が永続することが前提となる議論が続いていることなどがあると思います。1巻の労働日のような階級闘争や、ヨーロッパの古典文学や寓話、シュークスピアなどの引用や比喩などの印象に残る言葉がないこともその要因でしょう。
しかし、ハーベェイはこの2巻からマルクス主義の一新するような観点を読み解いていきます。ハーベェイの観点を要約すると
1)資本の分化、運動(生産、流通、販売、金融など)の様々な局面に注目
2)資本の運動に時間軸が導入されることへの注目。生産過程での搾取強化と同じように、資本の回転期間の短縮、空間の圧縮(流通あ通信手段の革新)の重要性への着目
3)時間軸の導入を空間軸の導入に拡張
4)資本の運動全体への着目。どの局面でも資本の運動の阻害が恐慌の原因になりうり、資本はそれを回避するが、その回避が更なる恐慌の原因をつくるという視点。
5)時間軸、空間軸の議論を都市空間論(資本のアーバナイゼーション)に拡張。資本の運動空間として都市をとらえ都市空間をめぐる矛盾は資本の矛盾でるという視点。
などになると思います。
ハーベェイの観点にたつと、生産点でのたたかいを重視し、生産手段の社会化を重視する釈迦主義社会観など、従来のマルクス主義のイメージが大きく変わります。資本の運度の様々な局面に注目し、都市空間を資本の運動の場として捉えるならば、生産点でのたたかい以外に様々な運動が社会を変える原動力になるという見方になります。
アメリカでのオキュパイト運動やサンダースの健闘、ヨーロッパでの反緊縮のムーブメント、日本での脱原発をはじめとした3・11以降の運動なども、ハーベェイの観点にたってことその意義を正当に評価できるのではないか。
ハーベェイ自身がそうであるように、本書が社会を変えていく理論として、現実の世界と結びつけてよまれることを期待します。