凄い小説でした。心が震えました。
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船戸与一作品の中でも特に人気の高い作品のひとつ「山猫の夏」。
「神話の果て」「伝説の地」とともに、
その舞台となる地から[南米三部作]と呼ばれる作品のひとつだそうです。
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「ブラジル版ロミオとジュリエットに端を発した血塗られた抗争劇。
殺戮の裏で暗躍する謎の日本人・山猫の思惑、そして結末に明らかにされる衝撃の事実…」
(作品紹介より)
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実にベタな響きで冒険小説にありがちな文言かなと思います。
しかし、実際はこの煽り文句では物足りないくらいスケールが大きな物語です。
読み出したら止まらず約740頁をあっという間に読み終えてしまいました。
読んでいて何度も、自分が何処にいるかわからないような感覚に陥りました。
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終局の30頁あたりは想い出すだけでも胸が熱くなります。
なんという美しさだろう・・・。
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読了から半月ほど経ちますが、まるで憑かれたように未だこの作品から離れられません。
分厚いこの本のどこを開いても胸が昂ります。
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因みに私は船戸作品初心者です。
初体験は「猛き箱舟」で、実は2015年4月、船戸氏の訃報を受けてのことでした。
「猛き~」が夫の20年来の愛読書だったということもあり、読んでみたくなったのです。
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そして1200頁一気読。寝食を忘れるほど私を夢中にさせました。
今まで読まずにいたことを心の底から後悔し、すぐにこの「山猫~」を購入しました。
船戸作品は、内藤陳さんじゃないですが「読まずに死ねるか」という存在となりました。
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書籍情報
1984年8月講談社より単行本として刊行、
1987年8月に同社より文庫本化、
2014年8月に小学館文庫より復刊。