残念ながら俳優引退宣言をしちゃったブルース・ウィリスが、「未来世紀ブラジル」の巨匠テリー・ギリアム監督からのラブコールを受けて主演した、監督お得意のディストピアSF大作。
随所にギリアムらしさが凝縮されていて、独特の映像美と不可思議な設定が全編にたっぷり詰まっているゼイタクな1作。
ストーリーの複雑さと、それでもちゃんとしている分かりやすさ、暗い未来なのにどこかカッコ良さを感じさせられてしまう脚本は、さすがのD・W・ピープルズ(「ブレードランナー」を書いた人。イーストウッド監督作「許されざる者」とこの作品で再評価が鰻登り)。元になった仏映画「ラ・ジュテ」は観てませんが、きっと観ない方がいい気がするw
共演陣も味があって、いい存在感を醸し出してくれます。全盛期?のマデリーン・ストゥの美女っぷりもいいですが、一番得をしたのは間違いなくブラピ。まさかのアカデミー賞助演男優賞を受賞しちゃう快挙。確かにこの作品でもブラッド・ピットの存在感とクセ物っぷりは強く印象に残る名物キャラ。美味しいところを掻っ攫っていったな、という感じです。
主演がウィリスに決まった経緯は割と有名で、監督がウィリスの代表作にして大出世作「ダイ・ハード」のあるシーン(トイレで、足に刺さったガラス片を抜きながら妻と電話をする際に見せた涙)が大好きだという話を振ったところ、ウィリスは同シーンで本来の脚本には無かった ”泣く”演技 をアドリブで自ら提案し、実現したというエピソードを語り、それをいたく気に入ったギリアム監督から正式にこの作品の主演がオファーされた、というもの。ええ話や。
「未来世紀ブラジル」は何かダメだった、という人も、この作品ならずっと観やすいハズ。そういう位置づけでもいいような気もします。