公私に亘る様々な情報を小さな端末に収めるようになった中、端末を置き忘れたことから生じたトラブル…自転車が流行る中、「自転車での轢き逃げ」というような事態を巡る犯人探し…「地下アイドル」なる活動をしている女性の周りで起こったトラブル…若い失業者に手を差し伸べるとして少し注目された活動が、実は所謂「貧困ビジネス」というモノであるらしいというような件…こういうような各篇は、ずうっと後年に“史料”のような価値が生じるのかもしれないと思えたが「それだけ」ではないように思う。
市井の、特別な地位や立場という程でもない若者が、何やらのトラブルをどうにかすべく奔走してみるという様子を介して、「どうしてこういう時代になった?」、「本当にこういう感じで人々は幸せか?」、「こういう様子が“正しい”のか?“正しくない”でも構わないかもしれないが、納得し悪い?」というような、「人生を見詰める材料」というのか「“材料”になり得るかもしれない何か」を供してくれるような気もするのだ。
愉しく、素早く読了に至った一冊。