一国の経済業績についてGDPを指標として評価することを止め、新たな計測方法(の考え方)を提案している内容である。
主旨はサルコジの前文とそれに続く要約でつかむことができ、まったく同意できる。
一方、3章に分けられた各論は、後半になるほど、抽象的で分かりにくく、実際的な指標に結びつけるに至るまで、種々困難が伴うことが予想される。
ただし、各論はともかく、要約にまとめられた主旨が重要なのだ。
サルコジが2008年2月スティングリッツ、セン、フィトゥシに要請しまとめられたものという。
通読後もう一度サルコジの前文を読んだ。
サルコジはこの報告書の勉強をフランスのすべての公務員の研修事業の教育課程に加えるという。
家事労働を正当に評価できていないGDPをもとに世界を思い描くことはどう考えてもおかしいと誰でも思うだろうと批判する。
また、精神的な緊張、重圧、不安によって社会の基礎が崩れ始めていて崩壊を防ぐためにますます多くの資金が投入されることとなりそれが経済成長に含まれることに疑問を呈す。
そして、「もしわれわれの計算システムが、労働や企業家精神や創造的知性に比べて、投機の社会的効用を過大評価しているのであれば、(中略)資本主義の心臓部に矛盾を持ち込み、資本主義を壊滅させるだけである。」と金融トレーディングが社会に奉納しているサービスに疑問を投げかけている。
「われわれが生きている歴史の時代は、政治家がただの管理者として現在の問題をただ整理し、変化に対して支援していれば済むような時代ではない。
政治家は変革を推奨し、加速し、変革の目標を決定しなければならない。政治は集団が行う事業であり、人間の意志力があらゆる種類の決定論や運命論に立ち向かう事業である。われわれが一致してわれわれの運命を選び取らなければならないものが、自由なのである。」と意思を表明している。
(文中敬称を省略しました)