シリーズの第9作ということになる。この時点で、シリーズの最初から10年程度を経てしまっているが、全く色褪せていない。そして本作登場時点から更に事実を経ている現在時点でも、色褪せないことに変わりは無い。
或いは、このシリーズの魅力は、発表される頃に少し話題になっている事象等も交えながら、「どうしてこういう時代になった?」、「本当にこういう感じで人々は幸せか?」と問うような、時代を超えてしまうような「人生の価値」のようなモノを問う内容が、軽快なストーリーとして纏められているということになるように思う。眼に留めて、入手した順に、シリーズの番号と無関係にドンドン読んでいるが、それでも各々を十二分に愉しむことが出来る。
シリーズの恒例で、4篇を収めた一冊になっている。収められた4篇各々が面白い。
エステ等について高額なサービス料金をむしり取るグループと対峙するという一件…所謂“ホームレス”ということに関して、不正を働こうとする人達と、その手先になっている人達の悪事を暴き出すという一件…止むを得ないような事情を抱えた人を、実は不正な手段で追い込むような卑劣な輩をどうにかしようとしう一件…池袋の一部が“チャイナタウン”とも呼ばれるようになった中での一件…各篇各々に、非常に面白かった。
実は先に、この本の後に出ている作品に触れたが…本作では、その少し後の作品に登場した作中人物が初めて現れたという篇も在って、何となく面白かった…
本作は一貫して、主人公のマコトの目線による一人称の語りで綴られているのだが、それが「多分、作者自身の目線」に重なる感じで、或る種の問題提起のような感じになっているように思う。
人の美醜というようなことは、各々の人が各々に考えるべきであって、折角貯めた貯金を全て使わされるようなサービスに係る何物でもない…どんな境涯であろうと、その境涯になってしまったなりに矜持を持って暮らす権利は在り、不正に晒される必然性等無い…適法ではない手段で搾取されるような状況は正されなければならない…普通な人々の背後に、何やら異様と言えば異様な状況が在ることを忘れるべきではないかもしれない…そういうような各篇のテーマのようなものが、何となく響く…