加賀恭一郎シリーズといえば、数々ある東野圭吾の作品群にあって珍しいシリーズ物です。
ただ、作品間のリンクがあまり無く、主人公の加賀にも際立った個性を付与されていないこともあり、シリーズと銘打ってはいたものの、各々独立した作品ととらえることもできるくらい繋がりは薄い物でした。
それに変化をもたらしたのが日本橋という舞台。前作『新参者』同様本作も日本橋界隈で起こった殺人事件を捜査するというもの。
同じ舞台での事件ということで、過去に登場した人や場所から、本格的に始動し始めたシリーズを感じることができます。
作品としては、被害者の最後の行動に釈然としない物があったり、事件を複雑に複雑にしようとする意志がかなり強引に感じたりもしましたが、やっつけ気味だった近作に比べれば良い頃の東野圭吾に近い作品で満足できる内容でした。