勾玉シリーズの第一作目。
私はすでに3部作全てを読み終えましたが、この『空色勾玉』が一番好きです。
本当に沢山好きな理由があるのですが、なんと言っても、日本の神話をモデルとした神と人の世界観に一気に惹き込まれました。
また、読書中、自然豊かな美しい葦原の情景が浮かび上がり、まるで森林浴をしている感覚でした。
イメージでは「もののけ姫」のシシ神さまがいる森。
活字から想像した世界でマイナスイオンに癒されるなんて。
それだけ描写が素晴らしく、見事な物語の世界が作り出されています。
自然から離れた日常アスファルト、高層ビル、灰色の景色に疲れている方には心からお勧めします。
”あんたの気を弱らせている一番の原因は、もう長いこと土にも水にも、生きた草木にもふれていないことだよ。あんたはそれらと切り離されて暮らせる人じゃないんだ。野の鳥をとじこめたように、生きられなくなってしまう。外へ出なくちゃいけないんだよ”
上記の鳥彦の言葉に、私は自分が闇の一族だと分かりました(笑
鳥彦、大好きです。
彼が助からなかったときは涙が溢れました。伊吹王も。
主人公の狭也よりも、脇役たちが魅力的な話でもあります。
稚早矢が「自分は何者なのか」知り、自分の意志を持っていくところも面白い。
強烈な神々のそれぞれの想いも。
黄泉の国の話でも自然と涙が頬を伝いました。
女神の優しさと、女神が見せるその世界の美しさ、懐かしい愛しい人に再び逢える喜び。
宗教によっては、死後に最後の審判を受け、天国/地獄に行く等とされていますが、私はこの物語の死後の世界がいいなと思いました。
優しい女神様が居て、慈しみ、癒してくださる。そうして、しばし休んだ後に、再び生を受ける。
このような死後の世界が待っていると考えれば、死ぬことは全く怖れるものではなく、安らかな、懐かしい気持ちになれますよね。
この辺りの考え方もとても癒されます。
最後に、神々たちの永年届かなかった想い、すれ違いが全て融和し、光と闇の永い闘いが終わりを告げた時に、全てが癒され幕を閉じます。一つの壮大な癒しの物語と言って良いでしょう。
この美しい物語と出会えて、心から良かったです。