最初の印象は難しい本だなというものでした。特に金融危機を描写した部分は、これは腰を据えてじっくり読まないと手強いぞという感じでした。でも、読んで行くうちにこの小説にどっぷり浸かってしまっている自分がいました。
筋は単純なんです。金融危機という世界的な大事件の渦中にいる主人公の原点回帰への願望が、時に淡々と、時に激しく吐露されている。それだけと言えばそれだけなんだけれど、その一行一行に秘められた思いや情報の重さがひしひしと伝わってくる。そんな小説です。だから、小説を単なるエンターテインメントと考えている読者にはおすすめできないかもしれません。もっと人生や物事を深く考える人にはおすすめの一冊です。